生きる力で地域を育てる〜福祉教育・福祉体験プログラム
高校生福祉体験学習〜はまゆうキャンプ〜

なぜ体験学習か
高校生が福祉について学ぶ方法、いわば福祉教育にはいろいろな方法がある。福祉そのものについてもいろいろな考え方がある。
横須賀市社会福祉協議会(以下、市社協)では、「高校生」という最も多感な時に、地域に密着した福祉について、 それはとりも直さず人権の問題でもあるが、取り組んでほしいと考えた。
地域にはさまざまな人がいる。いろいろな条件のもとで一生懸命生きている。まずそれを直視してほしい。 そして一人ひとりがみな違っている。この「みな違っている」ということが当然と受け止めることができるようになってほしい。
福祉の基本としてぜひこのことは学ぶ必要があると考えた。頭ではなく、心で理解してほしい。話して聞かせることは簡単だ。 理屈ではない。だから、ふれあって、体験して学ぶ。これが学習方法として最適ではないか。
人間として生きていくうえで絶対に必要なことであるから、実際にふれて、体験して学ぶ、 体験学習が必要なのである。高校生一人ひとりが、それぞれ体験し、ふれあって、感じて、 何かを考える、それが『はまゆうキャンプ』である。
市社協では、『はまゆうキャンプ』の目的を地域にさまざまな立場の人がいることを学び、そのようななかで、 自分たちが果たせる役割は何かを学ぶこと、としているが、体験というインパクトの強い学習方法で多くの 感動を味わいながら着実に成果を上げている。
みんなが施設職員の話を聞いている風景

<25年間の歴史>
25年間の歴史
『はまゆうキャンプ』は、ある高校の先生から、「生徒にボランティアの体験をさせたいが、 市社協として取り組んでいただけないか」という話から始まった。昭和51年のことである。
市社協もたまたま高校生を対象とした福祉教育事業を考えていたので、実施を前提に、「どのような形で実施するか」 ということで企画会議をもった。なにしろ何もないところから計画を立てるわけだから議論百出であった。 「高校生には無理」だとか、「事故があったらどうするのか」とか、「どこか他でやっているのか」という意見もあった。 その一方で、「福祉といっても基本的なことなので体験学習がよいのではないか」「福祉とは人間を学ぶこと、 1週間ぐらい泊まり込んでやるべき」などの意見も出た。
そうした話し合いを経て、第1回目を次の通り実施した。この3泊4日の宿泊型福祉体験学習は、平成8年まで続いた。

参加者説明会

○実施期日  昭和51年8月3日から6日までの3泊4日
○参加者  3校22名
○利用施設  老人施設1施設
○学習内容  日中は施設で実践的体験学習。夜間は、1日日は基調講演、2日日は前日の講演をもとに話し合い、 3日日は交流会、反省会(レクリエーションも可)

キャンプ前に参加者全員を集めて説明会を開催する。施設職員も出席し、施設の紹介、キャンプ中の注意事項の説明、 班分け、役割分担等を行う。班長、副班長を決め、班員はボランティア委員、学習委員、生活委員、 レクリエーション委員のいずれかになる。
毎日班会議を開き、キャンプ生が自主的に運営することにした。
日中は、お年寄りの話し相手、居室内の清掃、身のまわりの世話などをして、夜は、近所のお寺を宿泊施設として 借りたので、そこに帰って前記の学習や反省会をした。

昭和53年度、このキャンプの名称を『はまゆうキャンプ』とした。これは、夏に白い花を咲かせる『はまゆう』が、 当時の市民投票で市の花に決まったので、夏、清らかな白い花、高校生という連想で決めたものである。 このキャンプを記録するため、映画『老人と高校生』を撮った。
キャンプ予定表 昭和54年度、2つの老人施設に加えて、この年から障害者施設1施設が利用できることになった。
昭和56年度、障害者施設でのキャンプを『障害者と高校生』という記録映画に撮り、広く市民に紹介した。
昭和57年度、横須賀市民児協と那覇市民児協が姉妹提携を結んでいた関係で、那覇市の高校生2名をキャンプに招待した。 これは平成10年まで続いた。 これが縁で、那覇市では、十代のボランティア研修『あけもどろキャンプ』を実施することになったとのことである。 『あけもどろ』とは、南国の太陽が東の空に昇るときの、あの美しさを表現した古語と伝えられている。

年々、キャンプに参加する高校生が増加し、利用できる施設も増えてきた。毎年キャンプ終了後、施設、学校、市社協で 反省会を開催し、翌年にそれを生かしていくという方法で実施してきた。

平成9年度からは、学校側から強い要望があった保育園でのキャンプについて実施することにし、それに伴ってキャンプの方法を 変えた。これまで3泊4日の宿泊で実施していたキャンプを3日間の通所ということにした。 開始当初は、お寺などを借用して宿泊していたが、この頃になると施設側も整備され、その施設に宿泊する ということが多くなってきていた。
宿泊から通所への変更についてはいろいろな意見があった。日く、宿泊だからこそ夜に学習会や反省会ができ、 昼間の作業の理解ができた。他校の生徒との交流ができた。施設の職員が昼間とは違う雰囲気で接してくれてよかった・・・。 市社協としても宿泊型の研修の良さというものを十分に承知はしていた。
しかしながら、
@本年から実施する保育園では宿泊設備がない、
A施設側の負担が大きい、
B市社協職員も主催者として3泊4日の間職員が同道するが、 施設の数が増えて手がまわらなくなりその間の平常業務も滞る、
などを理由にすべて通所形式で実施することにした。


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