介護保険開始1年後に感じたこと

介護保険が始まって1年が過ぎました。日頃のニュース等でも、様々な、問題や事件もあったようですが、横須賀市ではどうだったのでしょうか?
横須賀市民と横須賀の介護者を代表しての介護者の会の方、そして横須賀市役所介護保険担当の方に座談会形式で、質問をぶつけてみました。

Q 介護保険がはじまって、1年が過ぎました。最初は危惧されていた介護保険ですが、全般的に、思っていたよりは穏やかな船出だったと言われています。 苦情や問題も多々あったとは思いますが、横須賀では、どうでしたか?
A
<横須賀市役所介護保険担当>
介護保険開始から1年の感想は、説明会等があると、いつも聞かれる質問です。
「基本的には、うまくいっていると思っている」と答えています。
しかし、これには、訳があって「思っていたほど苦情が来ない」だから、「うまくいっているのではないか」ということなのです。
特に、この1年サービスについての苦情が、当初予想していたほど来ませんでした。お互い初めての介護保険ですし、「苦情」→「直す」 という作業があって、制度やサービスは良くなっていくものです。苦情が来ない理由として
 (1)まだ「お世話してもらっている」という弱者意識があるのではないかということ。文句を言う筋ではないとの思い込みがあるのでは?
 (2)どこまでが、「わがまま」で、どこまでが「苦情」なのかがわからないということ。
などが考えられます。

<介護者の会代表者>
苦情は、お互いに嫌な気持ちになるものですし、お世話になっているという気持ちもある。我慢して、それでも我慢出来なければ、 パタッと、サービスを受けるのを止めてしまうお年寄りも多いようです。苦情を言うには、相当のエネルギーも必要ですから、 特にお年寄りのみの世帯では出にくいかもしれません。

Q いままで(措置制度)から介護保険への変更を簡単に言うと、「介護サービスがお医者さんにかかるような形 (医療保険のような形)で受けられるようになったこと」と「普通の買い物のように、良いお店を選んで、欲しい物、 良い物を買うといった具合に、介護サービスを選べるようになったこと」「ご本人の意思を尊重した契約となった」 ことと理解していましたが・・・。
A <横須賀市役所介護保険担当>
普通は、支払う金額と、そこから得られる満足感の間に、判断や評価の基準、バランス感覚というのが、 日常生活の中では自然と出来ています。
「このサービスで、これだけしてくれて、この金額なら、お得だ」とか、「損だ」「あそこは、良い」とか 「悪い」等。しかし、介護保険サービスには、まだ、それが無いようです。

Q 選べることにより、介護保険の主旨である「在宅で」に反して、負担感の少ない施設入所への志向が強くなった とも言われていますが?入所待ちの状況はどうですか
A
<横須賀市役所介護保険担当>
たしかに、そのとおりです。以前は入所申込みするのに、市役所で、いろいろと根掘り、葉掘り聞かれ、審査されましたが、 今は要介護度1があれば、基本的には申し込めます。現在、特別養護老人ホームへの入所待ち者は横須賀では1000人とも いわれています。ただ、この数字にも、ちょっとしたカラクリがあります。

ある施設で、入所者に空きができたので、申し込んでいる方に電話で入所の案内をしたら、「まだ、いいです」 「もう少し自宅で頑張ってみます」と言われ、次の入所者を決めるのに、何人もの方に確認をしなければならなかった ということもあったそうです。 介護保険以前では、すぐにでも特養への入所が必要な方に待っていただいていたので、「待機者」と呼んでいましたが、 いまは、いつかは入所したいという方もいらっしゃることから「申込者」と呼んでいます。
どうしても「これから数年後は、どうなるかわからない」という不安感がありますし、これだけ並んでいるなら、 並んでおかないとという焦燥感もあるので、とりあえず申込みしといたほうが良いという判断の方もいるようです。

いずれにしろ、多くの方が特養に入ることを希望されていますので、新しい施設の整備をしていこうとしています。
ただ被保険者がサービスを選べるのが介護保険ですが、この入所に関しては、介護度等によって、むしろ施設に選ばれて しまっているのが現状のようです。

Q 「サービスを選ぶ」うえで、制度を知っておくことは大切ですが、いかんせん複雑で難しく、一般の方が、細かい部分まで覚えて おくことは相当つらいと思います。そこで、このかわら版では、介護保険の鍵を握るケアマネジャーの重要性を紹介してきました。 「なんでも言う」「よく相談する」「希望をはっきり伝える」といったことは出来ていますか?
また、そういったことにこたえてもらえていますか?いまひとつケアマネジャーが、うまく機能していないようですが?
A
<横須賀市役所介護保険担当>
「良いケアマネジャー」と言われた時、多くの人が希望を聞いてくれて、望みどおりにしてくれる人が「良い」 というイメージがあるようです。しかし、「なんでもかんでも、のぞみどおりにする」のがケアマネの仕事ではありません。 希望を聞き、その希望を汲みながら、専門家としての見地でケアプランを立ててくれるのが、 良いケアマネジャーといえるのではないでしょうか。

<介護者の会代表者>
よく「良いケアマネジャーさん、誰か知らない?」と聞かれます。
そうすると、「あそこの、誰だれが良いわよ」と、以前から知っていて、とても熱心な方を紹介したりしていたのですが、 良いケアマネジャーさんが、多くの担当ケースを持って、忙しくなってしまうと、一人に時間がさけずに、 良いケアマネジャーさんではなくなってしまうこともあります。
また、ケアマネジャーさんに限らず、ヘルパーさんについても言えることですが、人間同士のことなので、相性の問題も大きい。 「合わない」という場合もあるでしょうから難しいところもあるようです。


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